ぱんせ
―『富士山』(田口ランディ著)―心に“どろどろ”を抱えたあなたに,「だいじょうぶだよ」
三砂 ちづる
1
1津田塾大学国際関係学科
pp.60-61
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100280
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答えのない問いに向き合う仕事
いのちはいつから始まるのだろう.
アメリカの裁判の場で,宗教界で,恋人同士の会話のなかで,医療者同士のお茶の時間に…….誰もがいつも考えた.「わたし」はいつから,「わたし」になったのだろう.精子が卵子に届いた,そのときだろうか.胎児が生き物の進化の歴史をたどり始めるころだろうか.人間の形をもつころだろうか.それとも,母親のからだから離れた瞬間だろうか.
こうした,私たちの根源にかかわるような大切なことへの議論を尽くしていくために,私たちのもっている「保健医療の知識」はいかにも貧弱である.いくら勉強会をかさねても,いくら専門書を読んで1人で考えてみても,すっきりとした解決はない.
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