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ある看護師のため息
こんなことで診療報酬の請求をしていいのか?
患者さんと散歩に行くだけ、外食に行くだけで、OT活動だ、SSTだ、精神療法だ、といって診療報酬を請求している。これでは精神科医療全体が白い目で見られるじゃないか。きちんと指導してほしい。
こういう意見って、あるよねえ。うん、たしかにある。非常に真面目で、きちんとした意見だ。ただの散歩や外食だけで、どこが医療なんだ。そんなことに、どんな専門性があるというのか、あるわけがない。素人には真似のできない、もっと医療らしい行為に対してこそ診療報酬は支払われるべきで、誰にでもできるようなことに対価を求めるのはプロとして情けない。ああ、恥ずかしい。どこかの正当な医療費を横取りしている気分になってしまう。たとえ患者と散歩に行くにしても、患者の社会復帰に向けて、綿密に計画され、治療関係者に共有されたプログラムの一環として、細心の配慮のもとに実施されるべきで、その方法は精神医学の観点から理論的に裏付けられた根拠があって、実施後の評価も適切に行ない、結果を文書として記録に残して、次のアセスメントに活用する。そういう医学的・専門的に構造化されたプロセスがあってこそ、公的な資金を請求する診療報酬にふさわしく、正当で社会的にも有用な医療行為と呼べるはずだ。
精神科医療は、容易には近づきがたい奥深い人間の精神病理を扱う本物の医療なんだ。もっとみんなが勉強して、しっかりしなくては、精神科医療に対して侮蔑的な世間の偏見は正しようがないじゃないか。私だけが真剣に考えてもダメなんだ。ほら、そこで楽しそうに笑って患者と遊んでいる場合じゃないんだって。もっと医療者としての意識を高くもてよ。だれが言えば変わるのか、主任やそこらじゃ効き目がないね。医療監査で病院まるごと絞られないと目が覚めないのか。いっそのこと、こんな病院つぶれてしまえ……。いやはや、勝手に想像してしまいました。
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