- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
高齢化で認知症が増えるのは確実です
近年、社会保障や福祉問題で必ず取り上げられるのは老齢化と介護の問題です。平均寿命統計(平均余命ではない)のデータを約半世紀前と現在で比較すると、男女ともに約15歳長寿化していることがわかります。一般には「高齢化社会」という言葉で表現しますが、社会の高齢化の定義は社会構成人口(総人口)の65歳以上の人口比率によってそれぞれ呼称があります。65歳以上の人口が7%以上となると高齢化社会、14%以上では高齢社会、21%以上を超高齢社会という分類です。国の毎年の人口動態調査の結果をこれに照らしてみると日本は既に十年以上も前から高齢社会に突入し、人口動向調査の試算では2010年には超高齢社会になるといわれています。これは特に医療とは切り離すことができない問題です。精神科医療と老年期医療は、認知症の治療分野をはじめ古くから関係がありますから、精神科医療に携わる方々はこれらの情報には敏感であろうと思われます。
すべてのヒトは老齢化すると少なからず認知症様症状を呈するようになりますが、全員が認知症となって治療が必要となるわけではありません。しかしながら、今後認知症の患者さんが増えることは確実です。ヒトの脳は非常に高度に発達した臓器であるため、少しの不具合でもそれが症状となって表面化し、認知症以外の問題としてさまざまな神経・精神障害を呈します。最近よくメタボリックシンドロームという言葉を耳にしますが、これは脳血管障害、脳梗塞などを発症させる危険因子が重積している状態を示す概念であり、これを警告される中高年が多いということは、彼らが老年期を迎えるときに認知症を含めた問題が起きる可能性が高まるということを示唆しています。このような状況を踏まえると精神科における老年期精神障害の詳しい知識が今後求められるようになると考えられます。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.