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I.はじめに
医薬品の依存性の歴史をみると,従来の薬に比べて依存性が少ないか,依存性なしとして新しく開発された薬も,使用されているうちに依存性が認められたり,時には先発の薬よりも依存性が強いということも少なくない。morphineに対するheroinがその良い例であり,barbiturateに対するnon-barbiturateも同様であった。
抗不安薬では,meprobamateの顕著な依存性が問題とされるようになってからすでに10年以上たつが,要指示薬として販売が規制されたのは昭和47年であり,行政的に速やかな対応とはいえなかった。
ヒロポンや大麻等の非医薬品の乱用,依存に対しては行政的対応も比較的速やかであるが,医薬品の場合は本来の薬効の陰に隠れて依存性の問題が正しく認識されるまで時間がかかったり,依存性には気づかれていても,新しい薬効への期待から臨床家が危険性を過小評価するきらいもなしとしない。しかし,長期間にわたって連続使用されることの多い向精神薬については,それほど顕著でない依存性に対しても神経質すぎるくらいの対応が必要であろう。
向精神薬の依存性というと範囲はかなり広くなるので,本稿では抗不安薬,抗うつ薬,抗精神病薬のうちから現在医療的に繁用されることの多い薬に限って述べることにする。したがって,抗不安薬ではその依存性についてすでに論じつくされ,また現在の日本では用いられなくなっているmeprobamateを除いて,benzodiazepine系薬剤だけを取り上げ,また,覚醒剤として依存性や乱用では周知のように問題は大きいが,医療的使用はほとんど無視できるamphetamineについても省略する。
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