連載 これで患者さんに説明できる。精神科薬の“薬理学的リクツ”・2
「抗精神病薬」その1 その歴史と分類
姫井 昭男
1,2
1大阪医科大学神経精神医学教室
2大阪精神医学研究所新阿武山クリニック
pp.88-98
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100307
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20世紀の最後の10年。これを米国では「脳の10年」とし、さまざまな分野で脳科学研究が行なわれました。精神疾患の研究結果から正常な脳生理機能が明らかになることも少なくありませんでした。科学は、精神疾患が「脳の病気」であると証明したのです。
紀元前ヒポクラテスの時代に、精神疾患に関する医学的記載はすでにありました。といっても、それは“健常と異常”とを分けるに過ぎず、疾患の概念で体系的な分類がなされていたわけではありません。18世紀末にピネルが鎖で繫がれ自由を奪われていた精神疾患患者を解放する時代が来るまでは、精神疾患患者は人格も認められず、罪人のように扱われ、隔離されるだけの状態でした。19世紀になって初めて、近代の精神医学の礎を築いた欧州の精神医学者たちが精神疾患を分類し、体系化しましたが、当時の医学では精神疾患の治療方法を確立するには至りませんでした。ですから、治療についての記載は精神医学が体系化されてから100年ほどの間はほとんどなく、特に統合失調症を代表とする内因性精神病の治療はないと思われ、その後も病院や施設に閉じ込めて社会から隔離することが治療の代わりでした。
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