連載 ケアフルな一冊『地球の落とし穴』
便利になって文化が消えた?
坂田 三允
1
1群馬県立精神医療センター
pp.102
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100251
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ゴールデン・ウィーク中,毎朝,もうすぐ1歳になる孫を抱いてちょっと遠出の散歩をした。旧中仙道を歩く。しかし,歩いている人はほとんどいない。ときどきすれ違うのは「ウォーキング」が目的と思われる老夫婦で,黙々と足早に通り過ぎていく。でも,私は道路沿いの家の庭に咲いているつつじや三色菫,山吹,こでまりを「きれいだねぇ」と,孫に話しかけながらぼーっと眺めたり,「いい天気ねぇ」と言いながら空を仰いだりした。なんだか忙しい忙しいといって毎日を過ごしている自分が馬鹿らしく思えてきた。
さて,『地球の落とし穴』である。著者は「東京に原発を!」で有名な広瀬隆。本書は11章から成る。語られるのは「インターネット中毒者への警告」「世界の株価を操る人々の物語」「遺伝子組み換え技術への疑問」「破防法や盗聴法が意味するもの」「ゴミ問題」「原発問題」などさまざまである。しかし,これらの11章の物語を通して著者が語りたいのは,結局のところ「今の日本はおかしい」ということであり,「このままいったら日本は滅びる」ということであり「皆でなんとかしようよ」ということなのだと思う。
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