巻頭言
電撃療法が消える
井川 玄朗
1
1奈良県立医大精神科
pp.856-857
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204188
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数年前から奈良県の国保審査委員を抑せつかっている。毎月,精神科関係のレセプトを審査しながら不思議なことに気付いた。電撃療法の請求がまったく見当らなつのである。
私が医者になりたての昭和30年代の初期に精神科療法の主力であったものがここには見られない。これは奈良県だけの傾向なのか?そう考え各地の審査医に電話し,お尋ねしてみた。“時に電撃療法の請求をみる”,“1病院だけある。ここはきわめて頻度が高い”と答えられた方があったが,その他の方は殆んど私と同じ印象を述べておられた。そして,つけ加え言われたことがある。“若い精神科医が電撃療法の経験がない。大学ではこの面の教育がなされていないのではないか”。この点例外はある。九州のある大学では週2〜3回は電撃療法があり,実地教育が行われているとのことであった。しかし全国的にみると,精神病院でも大学病院でもこの療法は微々たる存在になっていることがわかったのである。
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