連載 下実上虚・2
文句があるならお前が医者になれ!
西川 勝
1,2
1井伊掃部町デイサービスセンター
2京都市長寿すこやかセンター
pp.92-93
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100248
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ある看護師のため息
「Aさんのお薬を変えてから元気がないんですけど……」とドクターに相談しようとしたら、「お前は医者か? 文句があるならお前が医者になれ!」と怒鳴られてしまった。悔しくて、情けなく……。
「こんな夜中に悪いけど,ちょっと聞いてよ」。そう言って電話がかかってきた。
ドクターにゲキ怒りされてしまったという。「お前が医者になれって言われたって,そんなこと無理に決まってるじゃない。悔しくて,情けなくて……もう眠れないよぉ」
同じようなセリフを聞いたことがある。そう,ぼくがまだ看護人になったばかりのころ,仕事の帰りに上司の看護長に誘われた居酒屋でのことだ。どういう話の流れだったかは,もう覚えていないが,彼は吐き捨てるようにこう言った。
「週に一度回診にやってくる青二才の薮医者にぺこぺこして,言いたいことも我慢して,いつまでたっても誰かの下で働く。看護なんて男のする仕事じゃない」
自信家に見えた上司の意外な愚痴だった。そのころのぼくは,まだ無資格の看護補助で,医師どころか有資格の准看護士もまぶしいような存在だった。指示されたことを理解しようとするので精一杯で,疑問をもつ余裕などなかった。
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