連載 医者ときどき看護師・9
医者になって「失った」もの
平林 大輔
1
1(社)地域医療振興協会・東京北社会保険病院
pp.875
発行日 2008年9月10日
Published Date 2008/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101312
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- 文献概要
個人的な話で恐縮だが,この原稿を書いている今は,進路決定の時期とちょうど重なっている。来年の春から,医者として3年目になる後期研修が始まるが,それと同時に将来の専門科を選ぶことが多い。このときにどの科を選ぶかで,その後の道が大きく変わってくるため,非常に悩むところだ。私はもともと気が多いほうなので,これまでの研修でまわった科がどれもよく見えてしまっている。単に優柔不断なだけなのかもしれないけれど。
これまでの人生でもいくつか大きな選択をしてきた。その中のひとつに,「医者になる」ということがあった。そのときもやはりたくさん悩んだ。一度心を決め,でも次の日にはやっぱりやめ,しばらくしてからまたやろうと思ったりと,そんなことを何度も繰り返した。大学に入り直し,最初から勉強し直すのも,正直なところ面倒に思えることもあった。でも,医者になるという決断をしたことは全く後悔していないし,今振り返ってみても良かったと思っている。それは,ひとつにはギリギリまで悩み,最終的に自分ひとりで決断したためだろう。
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