特集1 はじめての抗精神病薬「副作用」マニュアル 前編
➀消化器系
Bacterial translocation
長嶺 敬彦
1
1吉南病院(内科)
pp.26-28
発行日 2005年7月1日
Published Date 2005/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100112
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原因不明の全身感染症
抗精神病薬を長年内服している患者さんの中に、原因不明の全身感染症を起こし、命にかかわる状態に陥る人がいます。血液培養をすると腸内細菌が検出されることがあります。腸内細菌によって敗血症を起こした現象です。
症例をみていただきましょう。もともと便秘傾向にあった53歳男性の統合失調症の方です。約2週間前よりイライラが増強し、定型抗精神病薬と抗パーキンソン薬が増量になり、抗精神病薬はクロルプロマジン換算量で1,400mg/日になりました。2日間排便がありません。それ以外には特に変わりはなかったのですが、急に38℃台の発熱と腹部膨満と意識障害が出現しました。
そのときの腹部単純レントゲン写真を図3に示します。巨大結腸で腸管内に糞塊があるように見えます。ニボー(鏡面像)やFree air(遊離ガス)はなく、イレウスとはいえません。全身状態は急激に悪化し数時間後には血圧も低下し始めました。大量の輸液とカテコールアミンの持続点滴、強力な抗生物質の投与を行ない、小康状態を得ました。
なお血液培養と糞便培養により、共に大腸菌(E. Coli)が数種類検出されました(表3)。血液検査データを見ると、著しい白血球の増加と幼若細胞の出現で、血中のエンドトキシンの上昇もありました(表4)。カルバペネム系の抗生物質とプロバイオティクスの乳酸菌・酪酸菌・糖化菌を投与し、どうにか回復しました。経過を図4に示します。
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