特集1 はじめての抗精神病薬「副作用」マニュアル 前編
➀消化器系
麻痺性イレウス
長嶺 敬彦
1
1吉南病院(内科)
pp.23-25
発行日 2005年7月1日
Published Date 2005/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100111
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イレウスは日常的?
抗精神病薬と消化管の異常は古くから問題にされています。大量の抗精神病薬は消化管機能を低下させます。
抗精神病薬を内服すると便秘になりやすく、それがさらに増量されると麻痺性イレウスになります。私の医者としての仕事の半分以上は便との戦いといっても過言ではありません。精神科病院には「浣腸のプロ」と呼ばれる看護師さんが多くいます。それくらい精神科臨床で排便の問題は日常的だということでしょう。
抗精神病薬を内服するとどうも便が出にくくなります。排便習慣がくずれて慢性の便秘になります。時には腸管の麻痺を併発し、麻痺性イレウスを起こします。イレウスでは嘔吐がつきものですが、抗精神病薬による麻痺性イレウスでは嘔吐が認められないことがあります。抗精神病薬には制吐作用があるからです。ですから排便の確認と腹部の触診が重要になります。イレウスの早期発見は一にも二にも、触診を含めた腹部の観察です。
56歳の男性の患者さんの事例を紹介します。定型抗精神病薬をクロルプロマジン換算で約1,400mg内服中でした。抗パーキンソン薬もビペリデン換算で6mg内服していました。そこに非定型薬へのスイッチングが考慮され、オランザピンが10mg追加になりました。
すると、もともと下剤を大量に内服してどうにか排便があったのが、数日間便が出ず腹部が膨満してきました。嘔吐はありませんでしたが、食欲もなくなったため、腹部レントゲンを撮りました(図1)。すでにりっぱなニボー(鏡面像)が出現しており、麻痺性イレウスです。絶食にし、輸液を行ないながら高圧浣腸を行ない、約1週間でイレウスは解除しました。
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