特集2 暴力、そのあとに。被害にあったスタッフへの、職場としての対応
―暴力被害を口に出せない看護者の心理から考える―被害者支援システムの構築
鈴木 啓子
1
,
石野 麗子
2
,
小宮 浩美
3
1静岡県立大学看護学部
2聖隷クリストファー大学看護学部
3千葉大学看護学研究科
pp.30-38
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100093
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医療の現場で日常的に起きている暴力
阪神淡路大震災後10年が経ち、この間日本の各地で被災者に対するこころのケアの重要性が周知され、災害救援者のストレスの問題も広く認識されるようになった。イラクへの自衛隊派遣やテロ対策の問題、そして中越大地震やスマトラ沖大地震と、昨年もさまざまな紛争、事件、災害が発生し、それにかかわる自衛隊員、消防職員、警察官などが直面する可能性のある惨事ストレス対策の重要性も認識されるようになっている。
このような災害や大事件はある意味では非日常的出来事であるが、医療の現場ではさまざまな医療事故や、医療者が患者や関係者から受ける暴力の問題などが日常的に起こっている。高齢者のケア現場や救急外来、集中治療室(ICU)などでは、患者が混乱し暴力が出現することは珍しくない。また最近の医療の高度化や入院期間の短縮といった背景も、患者と家族のストレスを増大させ、小さな行き違いから生じる医療者とのディスコミュニケーションが、医療不信を招き、攻撃や暴力的言動につながることもある。
このような、医療における職場暴力の実態に焦点を当てた日本看護協会の調査*1によると、過去1年間に保健医療福祉施設に勤務する看護、介護職員(1,214人対象)で身体的暴力被害にあった者は3割に及んでいた。さらにこの調査からは、職場暴力の問題をめぐる労働者の安全管理対策についての不十分な実態が明らかになっており、今後の安全対策の整備の必要性が指摘されている。
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