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●それは温度板から始まった
当院の精神科開放病棟においては、入院生活を送りながら、患者さん自身が自己の健康状態を管理している、治療へ参加しているといった意識を高める目的で、「健康管理表」を付けてもらう実践を行なっています。
事のはじめは、開放病棟で「温度板」を患者さんに記載してもらう取り組みでした。開放病棟に入院しているほとんどの患者さんは日常生活において介助を必要とするレベルではなく、現実検討能力といった健康的な部分が保たれ、自分の状態について言語化もでき、治療ニードもあり、休養・社会復帰にむけて入院生活を送れる状態です。このことから入院によるセルフケア能力の低下を予防しつつ、自分の状態を把握し、共に治療に参加できるように支援することも看護の上で必要だと考えたのです。
平成元年、患者さん自身が自己の身体・精神状態を管理できることを目的として、「電子体温計と温度板」をベッドサイドに置き、記入してもらうという提案が当時の係長・主任から出されました。患者さんが記入するものとしては、体温や脈および排泄状態のみとし、血圧測定は、看護師が実施しベッドサイドで記載する方法をとりました。余白部分には、患者個々が、睡眠状態、食事摂取状況、うつの状態や幻聴・被害妄想、強迫症状など、自分の状況について自由に記載してもらうようにしました。
記載された温度板がベッドサイドにあるため、看護師の側としては回診や面接時、ラウンド時にそれを見ながら患者さんの状況が把握でき、患者さんもそれをもとに自分の状態を伝えられるといった利点につながっていました。
温度板をベッドサイドに置き始めた1年後に、筆者は開放病棟を離れました。そして平成14年に10年ぶりに開放病棟へ戻ってきて、係長代行として勤務することになりました。すると10年前と同じように温度板や体温計が患者さんのベッドサイドで管理され続けていましたが、温度板には空欄が目立ち、医師・看護師サイドのほうにも記載漏れがあることに問題意識を感じました。開放病棟に入院してくる患者層の変化(自分で記載し管理できる患者さんの減少、高齢者の増加など)や、精神科の勤務経験年数が2~3年でスタッフの入れ替わるという状況が重なり、徐々に温板表の管理や活用において意識の低下がみられるようになったようです。
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