特集 性暴力―「起きた後/起こる前」に支援者は何ができるか?
性暴力被害にあった女性を支援する
北仲 千里
1
1広島大学ハラスメント相談室
pp.207-212
発行日 2025年3月10日
Published Date 2025/3/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25020213
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I 性暴力の社会学
私が専門とする社会学では,今,我々が生きる社会においてどのように人々が性や性暴力をとらえるのか,その結果として社会構造(法制度や支援も含め)がどのように作りあげられているのかということに関心をおく。ごく最近まで,性暴力を相談できる機関が地域社会になかったことも,社会でどう扱われてきたかを示すものである。この問題を読み解く際に無視することができない視点はもちろん「ジェンダー」であるが,そのほかにも「セクシュアリティ」や,「相談支援の位置づけ」などいろいろある。ここでいう「セクシュアリティ」とは,(「ジェンダー」が性別についてそうであるように)それぞれの社会において「性的なもの」に関して人々が共通して抱いている考え方・捉え方・価値/道徳基準などのことである注1)。例えば同性愛への社会の態度や,婚前の性行為経験の扱いのように,セクシュアリティは,近年,劇的に変化しており,少し前は「自然,当たり前」だとされてきたことが,今日では全く別の価値軸で扱われるようになってきている。なかでも「性暴力」は,近年大きく変動しているセクシュアリティの典型例である注2)。

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