特集1 看護がはじめる「認知療法」 幻聴・妄想への新しいアプローチ
【研究論文】評価尺度で示す「認知療法を取り入れた看護面接」による変化
前川 早苗
1
1三重県立こころの医療センター
pp.29-35
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100060
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はじめに
幻聴や妄想の治療は、精神科医による薬物療法および精神療法を中心に行なわれてきたが、それらの治療によっても幻聴が消失せず、日常生活に支障を来している患者がいる。1990年代になりイギリスのデイヴィッドとダグラス★1、日本では原田誠一らが統合失調症の認知行動療法を確立した★2-9。この療法は、従来から患者が担う2つの役割、「服薬」と「リハビリテーション活動への参加」に加えて、「回復のために自分自身で主体的・能動的に治療に関与する役割」を担えるように支援するものである。
1990年代後半から現在に至るまでの精神看護に関する文献★10-14では、患者の幻聴・妄想に対する看護として、「妄想・幻聴の内容の確信を強めるため肯定しない」「信頼関係を壊したり、患者の妄想・幻聴をさらに強固にするため否定はしない」「妄想・幻聴についての話題は病的な世界を広げ確信づけるので聞き出さない」といった理由から、《妄想・幻聴に対しては否定も肯定もしない》《症状のために生じている感情を受け止める》《安全を保障する》《看護師にとっては事実だと感じないと伝える》《日常生活の援助を通して現実検討を高める》といった看護の介入が記されている。
今回は、薬物療法によって幻聴が改善せず、日常生活行動に著しい支障を来している統合失調症患者に対して認知療法を取り入れた看護面接を実施し、精神症状、患者の主観的QOL、日常生活行動の結果から、このケアの効果を検討した。
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