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精神科看護師に身体的ケアも求められる時代です…
私たちの病院には合併症病棟があり、他の精神科病院や当院の精神科病棟から合併症患者を受け入れている。扱うケースのなかには、もう少し身体のことに目を向けていれば、もっと早く対応できたかもしれないと思うケースも少なくない。
こうした経験や患者の高齢化に伴う身体疾患を併発する患者の増加などを考えると、精神科ではこれまで「精神」をみることが精神科看護師の役割とされてきたが、これからは「精神」と「身体」の両面をみることが精神科専門看護師の役割として求められる時代ではないだろうか。しかし、これまで精神科看護師が身体的ケアに関する十分な教育を受けてきたとはいいがたい面もある。
そこで私たちは、精神科の看護師がもう少し身体面にも関心をもってケアをしてくれたらという想いから、2003年に『身体合併症をもつ精神科患者へのアプローチ』*1という本を著した。この本は、当院の臨床から得られた知見をまとめたものだが、そこに表された合併症患者の特徴や医療者の傾向は、美濃さんの論文(以下、美濃論文と略す)と一致している点が多く、「疾患はがんに限定されているけど、論文で抽出された阻害要因のほとんどは合併症全般にいえる」というのが、論文を読んだときの率直な感想である。当院の看護部長も同様の感想をもち、この論文が精神科身体合併症(以下、合併症と略す)の本質的な問題を明確にしていると指摘していた。とくに、発見期の【患者の要因】や【精神科医、精神科看護師の要因】は、臨床の現状を如実に表していると思う。
美濃論文は、私たちが臨床の場で感じていることを研究的視点で帰納的に明らかにしてくれている。つまり、現場感覚としての合併症の特徴を客観化してくれたといえる。
ここでは、美濃論文のがんという限定された疾患から明らかになった要因のうち、発見期の【患者の要因】や【精神科医、精神科看護師の要因】を中心に、それらが合併症全般に応用できるかという美濃さん自身の展望に対して、具体的事例を提示しながらその可能性を読者とともに探ってみたい。
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