特集 “家族を支援する”ということ
日本の家族介護の特徴とその変遷
近森 栄子
1
1神戸市看護大学看護学部
pp.453-463
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901502
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はじめに
「日本の家族」を看護・介護の分野で論じようとするとき,まず何に焦点をあてればよいか。1つの視点として,日本社会の文化的な背景である,家や同族などの社会形態が,近代日本社会の看護・介護にどのように影響しているか検討を加えることにより,その課題に迫ることができるのではないかと思う。
現在日本は少子・高齢社会を迎え,多くの人々が長寿を経験できるようになった。急速な高齢化が進む中,高齢者介護の課題は,独立した専門職に委ねるべく,介護保険制度が開始され高齢者の介護機能は社会化された。しかし事はそう単純ではない。未だ家族の中で介護は誰が担うのかという問題が取りざたされ,訪問看護師やホームヘルパーが家族の葛藤に巻き込まれる。これは,訪問看護・介護が断続的であり,専門的な知識を必要とする医療処置も含め,家族の行なう介護に補完的に関わる場合が多いこと,培われた家族の情愛や憎悪,経済的問題や兄弟間の葛藤,遺産相続など複雑な要素が,介護する人・される人の関係にからむために生じている。加えて,日本文化特有の規範,道徳,宗教,しきたりなどが家族のありように影響し,よりいっそうその葛藤について理解を難しくさせている。
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