特集 人獣共通感染症—獣医衛生領域から見た対策
日本の動物検疫制度の変遷と現状
櫻井 健二
1
1農林水産省動物検疫所
pp.46-52
発行日 2019年1月15日
Published Date 2019/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209056
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はじめに—動物検疫をめぐる情勢の変化
わが国は,これまでに度重なる動物の伝染性疾病の侵入と直面してきた.しかし,国土が海に囲まれているという地理的条件と輸入検疫の実施によって多くの動物の伝染性疾病の侵入を防止し,また,国内の防疫措置の実施によって多くの動物の伝染性疾病の清浄化を達成してきた.
一方で,わが国の動物検疫を取り巻く情勢は目まぐるしく変化してきた.国際化や国際交流の進展,科学技術の進歩による人・動物・物の移動手段の多様化,その移動時間の短縮などによって,人の移動機会は着実に増大している1).また,世界貿易機関(World Trade Organization:WTO)が設立され,経済連携協定(Economic Partnership Agreement:EPA)や自由貿易協定(Free Trade Agreement:FTA)が締結されて貿易の自由化が進展したことなどに伴って2),動物や畜産物などの輸入機会も変化している(図1,2)3)4).
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