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1. 薬理ゲノミクス/ケモゲノミクスの誕生と展開
2003年4月14日,「国際ヒトゲノム計画」におけるヒトゲノムシークエンスの解読完了が,関係6ヵ国首脳により宣言された。2001年2月15日(Nature),16日(Science)にヒトゲノムドラフトシークエンスの詳細が公表1,2)されてから約2年余を経過して,99.99%の精度で一部を除き解読された。その結果,現実にポストゲノムシークエンス(機能ゲノミクス)時代がスタートした。いうまでもなく,この機能ゲノミクスを基盤にして薬理ゲノミクス3)とケモゲノミクス4,5)が構築されつつある。ゲノム創薬は,この薬理ゲノミクスやケモゲノミクスにより初めて可能になることから,今後の展開は熾烈さを極めると思われる。
一方,これらの報告からヒトゲノム上に約4万種の遺伝子が認められ,転写・翻訳・翻訳後における調節機構の結果約30万の分子種の存在が示唆されている。すなわち薬理ゲノミクス研究は,約4万種類の遺伝子から発現し,修飾された数十万種の分子種を識別する薬理プロテオミクスの必要性が高まってきた。薬理ゲノミクスは,既存医薬品の作用/副作用に関与する遺伝子クラスターを同定,ゲノム/プロテオーム機構を解明し,薬物応答性の個体差機序を解明する。さらに最終目的として未解決のヒト病態(主に多因子疾患)に有効な新しい薬物療法を確立することにある。現在までの非常に長い試行錯誤の歴史から,人類はわずか483種類の医薬品ターゲット分子種しか獲得してこなかった(図1)6)。しかしながら精密なゲノム地図が完成した今世紀には,人類史上初めて経験する,想像もできない速度での創薬ターゲット発見/バリデーションや新しい治療法開発が成し遂げられることが期待されている。
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