特集 「喪失」に直面する人へのケア
「喪失」による悲嘆と、求められるグリーフケア
坂口 幸弘
1
1関西学院大学人間福祉学部人間科学科
pp.356-363
発行日 2020年5月15日
Published Date 2020/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201435
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喪失(ロス)とは?
個別性の高い体験
最近、「○○ロス」という言葉をしばしば見かけます。以前から、ペットとの死別を示す「ペットロス」という言葉はありましたが、近頃は著名人の結婚や引退、テレビ番組の終了などでも、ファン心理を表す表現として用いられています。片仮名表記でのロスという表現は目新しいですが、ロス(loss)、すなわち「喪失」という体験自体は、もちろん最近の現象でも特殊なものでもありません。
「喪失」とは自らの生活や人生にとって大切と思う何かを失うことであり、それが本人にとって重大な意味を持つ主観的な体験です。客観的には同種の喪失であったとしても、その受け止め方は人によって違います。直面した喪失を過大に捉える人もいれば、そうでない人もいて、その出来事が及ぼす影響も人によって大きく異なります。喪失体験は個別性の高い体験であり、周囲の人が想像している以上に、本人は大きな苦痛を抱えているかもしれません。
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