特集 高齢者虐待を考える
その人にとって何が幸せか―高齢者虐待の事例検討から見えてくること
大越 扶貴
1
1福井大学医学部看護学科
pp.642-646
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100886
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はじめに
在宅における看護や介護など援助職の仕事は,療養者や家族に対して“その人にとって何が幸せか”を理解し,チームで最善を尽くしていくことを目的とします。高齢者虐待が生じている家族の場合もその目的は同様であり,事例検討はその目的達成のための一手段であると考えます。
虐待が生じている家族の場合,要介護高齢者は自ら助けを求めることが困難であり,虐待する側とされる家族の慢性的ストレスも計り知れない状況です。単純に介護負担という言葉で括れるようなものではなく,家族の関係性への介入が必要となってくると感じています。
このような状況の中で私は,東京都A区とB県という地理的環境や家族形態,文化・価値も異なる2つの地域において,主に家族関係に焦点を当てながら援助職と事例検討を行ないました。本稿では,高齢者虐待の事例検討を通して何が見えてきたのかを①援助職が事例検討を要請するとき,②援助職が抱える対応上の困難,③事例検討の成果,に焦点をあてて述べていきます。
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