特集 ターミナルケア再考
還りのいのちに寄りそう―看護師のホスピスケア読本
米沢 慧
1
1評論家
pp.496-500
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100690
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はじめに
いのちの流れには往きのいのちと還りのいのちというように折り返しのイメージでとらえる視点がいるのではないか。わたしは近年そうした視点から『ホスピスという力』(日本医療企画)などターミナル期のいのちに言及した著作を書いてきた1)。
往きのいのちとは人生の往路である成長期や壮年期に相当しており,医療のあり方は救命であり延命の治療が中心である。還りのいのちというのは老いを生きる姿,あるいは死に向かうターミナル期のいのちの姿をさしており,医療のあり方は看護や介護,ホスピスなどケア中心ということになる。前者がいかに死を遠ざけるか(幸せに生きる),そのQOL(いのちの質)に寄与する往きの医療と呼ぶとすれば,後者は,そう遠くない時点で確実に訪れるであろう死を受け入れ,いかにターミナル期を生きるか,そのDOL(いのちの深さ)に寄りそう還りの医療と呼ぶことができる2)。
寄りそうとは,介護・看取り・見送るという還りのいのちと向きあう全過程に関わるということである。ここでは,最近刊行された本から印象に残ったものを何点か紹介してみる。
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