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高齢者の三大疾患
在宅に服薬指導にうかがうと,今まできちんと服薬していたお年寄りの残薬が急に増えていることが,しばしばあります。環境の変化などで,このようなことが一過性にみられることもありますが,ときには老人期痴呆のはじまりのサインであったりします。痴呆は人口の高齢化によって急速に増えつつあります。80歳以上の人では6~7人に1人が痴呆に罹患しているといわれています。痴呆,骨粗鬆症,排泄障害は高齢者の3大疾患です。アメリカの痴呆克服キャンペーンで言われた“痴呆は人を二度殺す”という言葉のとおり,体は元気でも心全体が病むため,本人はもちろんのこと,家族にせまられる介護の負担は大きなものとなります。痴呆とは,今までの知的レベルと比べると,記憶・判断力・問題解決・実行機能などの高次機能が障害され,日常生活に支障をきたす病態です。
薬による治療法がどこまで確立されているかというと,原因によっても違いがありますが,対症療法が中心です。パーキンソン病のように目に見える効果がある薬はありませんが,早期に発見できれば,一時的に症状を改善し,進行を遅らせる薬が発売されました。また,痴呆の周辺症状を改善させることや,中核症状の改善,進行の防止などに対する治療法があります。痴呆の治療は,薬だけでは効果を期待できないため,行動療法と組み合わせて行なうのが一般的です。
いずれにしても,早期発見,早期治療が必要不可欠です。しかし,痴呆症状が出ても,家族の理解が得られなかったり,年のせいとかたづけられたり,治療に繋げられないことが多々あります。また,重介護であるため,本人だけではなく,介護する介護者のケアも非常に大切なことであると考えます。
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