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創刊30周年記念特集 精神医学—最近の進歩 第2部
老年痴呆と抗痴呆薬
Senile Dementia and Anti-Dementia Drugs
西村 健
1
Tsuyoshi Nishimura
1
1大阪大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Osaka University Medical School
pp.453-462
発行日 1988年4月15日
Published Date 1988/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204504
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I.はじめに
現在,われわれが言う老年痴呆に相当する状態は古くから知られていたが,老年痴呆の概念を明確に独立させ,その病態を具体的に記述したのはEsquirol JED(1838)である10)。19世紀末から今世紀初めになると老年痴呆についての詳しい記載がみられるようになり,Kraepelinの精神医学教科書(第8版)では症状と老人斑や神経原線維変化を含む病理所見の詳細な記載とともに1906年Alzheimerによって報告されたAlzheimer病と老年痴呆の異同も議論されている。
当時は恐らく老年痴呆の問題が今日のように大きな医学や社会の問題となるとは予想されなかったであろう。高齢化社会の到来とともに,とくに高齢化が高度に進んだ先進諸国の間で老年期痴呆への医学的,社会的対応が最も重要な社会的課題の一つとなっている。老年期の痴呆の主な原因は老年痴呆と脳血管障害であるが,なかでも病因や特異的治療法が明らかにされていない老年痴呆に関する研究が重視されている。
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