連載 人工呼吸器とともに生きる・1【新連載】
高澤信一さんの場合(前編)
小林 明子
1
1福井県立大学看護福祉学部社会福祉学科
pp.48-54
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100047
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連載のはじめに
■ALS患者をとりまく社会情勢の変化
日本ALS協会福井支部(以下,「福井支部」)は,全国で6番目の支部として,1990年11月11日に設立され,2004年6月に15回目の総会を実施しました。私は支部の事務局長として,この15年間で100名を超えるALS患者,人工呼吸器使用患者会員と関わってきました。
今日に至るまでの15年間に,日本の医療・福祉・保健等の公的制度充実に伴い,ALS患者の在宅療養をとりまく支援環境は,大きく進展しました。まず,医療保険制度では,在宅人工呼吸器管理料の医療保険点数の制度化とともに,人工呼吸器のレンタルが普及したことがあげられます。さらに,在宅医療の要となる訪問看護態勢の充実も重要でした。また,社会福祉制度の面では,意志伝達装置や吸引器の給付制度導入等があげられます。そして,2000年に開始された介護保険制度では,ALS患者もサービス利用の対象となりました。その結果,ケアマネジャーの支援のもとで,訪問看護や訪問リハビリ,訪問介護,訪問入浴をはじめとした多様なサービス利用が可能となりました。
また,2003年からは,支援費制度が導入されています。これにより,全国各地で在宅人工呼吸器使用者への介護者の長時間派遣を実施できる可能性が広がりました(それまでは全身性障害者の介護人派遣制度が利用できる一部の先進地域に限られていた)。これらのサービスを知り,上手に使いこなすことができれば,呼吸器を使用した重度障害のあるALS患者の自己実現は大きく期待できるはずです。
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