特別記事
カルテ開示をめぐる諸問題―悪条件のなかであえて診療記録の開示を求めるわけ
福地 直樹
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1福地・野田法律事務所
pp.657-661
発行日 2000年8月10日
Published Date 2000/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901999
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はじめに
カルテ開示を含む診療情報の患者への提供がいわれて久しい。特に,患者・市民サイドから患者の権利の確立が要求され,それまでの父権主義的な医師・患者関係から,患者が医療に積極的に参加することによって,医療を医療従事者と患者の共同行為と位置づけ,それによって医師と患者の間の信頼関係が確立し,さらに医療の質が向上するという考え方が台頭してきた。国内におけるそうした動きと,諸外国でのインフォームド・コンセントの法制化やカルテ開示の現実から,ようやく厚生省が重い腰を上げた。
1996(平成8)年7月に厚生省はカルテなどに記載された内容は患者の診療内容等に関する重要な情報であり,患者の求めに応じたカルテ等の診療記録の開示の問題について,その際の条件,記録の保存方法,保存期間のあり方を含め,検討の場を設けることを提言した。翌年の7月に「カルテ等診療情報の活用に関する検討会」を設置し,1998年6月に検討会は報告書を公表した。その中で,診療記録開示の法制化が提言されたが,日本医師会の強い抵抗にあって法制化は見送られた。
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