連載 くせものキーワード 第21回
カルテ開示
和田 忠志
1,2
1あおぞら診療所
2保健・医療・福祉のキーワード研究会
pp.142-148
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100629
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
医療における自己決定権が重視されると共に,「カルテ開示」の動きが広がっている。これは,自己の医療情報を知るという当然な行為ともいいうる。しかし,これまで,「カルテ開示」は,主に重大医療事故の真相を知りたい患者・家族の要求によりなされてきた。この場合,医療機関と患者・家族との話し合いによる入手ばかりでなく,法的手段による「証拠保全」(カルテ保全)が行なわれてきた。また,医療費の不正請求への患者側の疑念は,カルテ・レセプト開示を要求する理由となっている。さらに,トラブルや不信感に起因しなくても,国民の多くは医療内容を正確に知りたいという素朴な気持ちをもっており,その方向からのカルテ開示も存在する。また,少数だが,積極的にカルテを開示することで患者とのコミュニケーションを円滑にしようとする医療機関も見られる。医事紛争における「カルテ開示」と,この積極的な「カルテ開示」は,同じ言葉でも,かなりニュアンスに違いがある。本稿では,カルテ開示とその問題,関連用語について考えたい。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.