特別寄稿
イギリスにおけるカルテの開示制度
宇都木 伸
1
1東海大学法学部
pp.1116-1120
発行日 1998年12月1日
Published Date 1998/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902575
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イギリスにおいては,カルテは1990年の法律によって開示が義務づけられている(コンピュータ化された情報については医療記録も含めて,すでに1984年に一般的に開示されることになっており,その連続線上に手書きの医療記録を乗せたのが90年法であるとみてよい〈Gd 1-3〉).その法の成立直後に政府は『1990年医療記録アクセス法—NHSのためのガイド』という30頁ほどの小冊子を回状として全国の医療関係施設に配布し,関係者への周知方を依頼した.その冊子は,法の紹介・解説を本文とし,付録として①模範申込み書式,②病院記録へのアクセスのガイドライン(これは家庭医も参照することが予想されている〈Gd 6-10〉),③フローチャートおよび④患者への広報シートを備えている(図1に①,2に④を訳出した).
いま,わが国でもカルテ開示の法制度化が進められようとしているので,イギリスの状況を医療者に知っていただきたく,急ぎ紹介する.ただし,この法律自体はすでに邦訳が公にされているし,ごく最近も法律誌に紹介された(注1).そこで本稿では法規定に関する部分の紹介は最小限度にとどめ,法規定にない解釈や実際の運用にかかわる部分を少し丁寧に紹介することに努めた(法の規定を〈§〉で表し,小冊子本文の解説を〈Gd〉,ガイドラインのそれを〈GL〉と表示した.注2).
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