連載 看護の裁判例を読みなおす・1【新連載】
点滴静注ミス事件[その1]
小西 知世
1
,
宮崎 歌代子
2
,
平林 勝政
3
1明治大学大学院法学研究科
2東京医科大学病院看護部
3國學院大學法学部
pp.296-300
発行日 2001年4月10日
Published Date 2001/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901402
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連載を始めるにあたって
近時,看護婦・士(以下,看護婦)が関与した事故のニュースが,新聞・テレビ等でセンセーショナルに取り上げられることが多い。報道された事実関係を前提にする限り,きわめて初歩的なミスといえるようなもので,看護婦として言い訳のしようもないものが少なからずあるように思われる。看護婦による事故そのものが,近年増えたのであろうか。それとも,事故件数には変わりはないものの,世間のこれを見る目が変化したのであろうか。手元に統計的数字をもつものではないが,おそらく後者であろうと思われる。他方,21世紀を迎え,看護の重要性とその専門性の確立がしばしば言われる。このような状況において,看護婦の法的責任とは何か,とりわけ,看護婦の「過失」をどう捉えるかが,改めて問われている。
看護判例研究会(代表・平林勝政)は,ここ数年,若手の法学研究者,看護婦および医師とで,看護の裁判例を読みなおしてきた。ここで取り上げてきた看護の裁判例には,看護婦が被告または被告入となっているケースはもちろんのこと,民事責任が問われている裁判例においては,直接の訴訟当事者は病院の開設者であったり医師であったりする場合であっても,その「過失」の有無が看護婦について問われているケースが含まれている。
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