連載 私が休日に出会った本・10
"価値ある存在"を証明する誘惑
加納 佳代子
1
1八千代病院
pp.827
発行日 2001年10月10日
Published Date 2001/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901322
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7月末,「感情労働と看護」というテーマで開催された講座のシンポジストを頼まれた。私の出番は午後で,午前中は静岡県立大学教授の石川准氏による講演「感情労働とは何か」があった。
当日,用意した原稿を忘れてきた私は,自宅にいるはずの娘に会場へ原稿を送ってもらおうと躍起になっていたが,電話は留守電だし,携帯電話も通じない。いったいどうしたらいいものかと,気もそぞろに講師控え室に入っていった。そのとき,石川氏とおぼしき人が控え室の奥から出てきたのだが,目を合わせない。ああ,私は随分と失礼な態度で部屋に入ったに違いない,と思い込んだのも束の間,名刺を差し出して初めて気がついた。石川さんは目が見えないのだった。
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