特集2 アクションリサーチで“思い”を共有する!
PART 1 看護においてアクションリサーチに期待されること/PART 2 アクションリサーチの看護における応用分野―災害看護の経験から/PART 3 SSMベースのアクションリサーチのガイドライン―実際にやってみよう!
内山 研一
1
,
鈴木 聡
2
,
前田 和美
3
1大東文化大学経営学部
2日本アクションリサーチ協会
3慶應義塾大学病院
pp.376-396
発行日 2013年5月10日
Published Date 2013/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102765
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はじめに
アクションリサーチが取り上げるのは看護プロセスの本質
SSM(Soft Systems Methodology:ソフトシステム方法論)をベースとして行なうアクションリサーチ(以下,アクションリサーチ)は,看護のプロセスの本質そのものと非常に近い考え方をもつ方法論である。科学的実証主義が「いつでも,どこでも,だれがやっても同じ結果が出る」ような,客観的で普遍的な,反復可能性(repeatability)をもった形式知を求めるのに対し,アクションリサーチでは,人間の事象においては「原理的に反復可能性はあり得ない」としたうえで,科学的実証主義が無視してきた主観性や人間の個別の経験,価値観,身体性を,「思いのモデル」という道具を使うことで取り上げる。
思いをモデルに表現し,そしてモデルを使った気づきから実践を導いていくという,繰り返しによる連続的な学習は,現場の状況を変革すると同時に,アコモデーションを通して,関わる人々や,組織の見方・考え方を変革していく。アクションリサーチが求めるのは,経験をベースにした実践の知(臨床の知,現場の知)のような暗黙知である。
アクションリサーチは,教育,組織論,情報システムなど,今までの科学的実証主義に限界を感じてきた多くの分野の研究者や実務家によって,研究の方法論や現状改革のガイドラインとして応用されてきている。その応用分野はいたるところに考えられるのだが,われわれのここ十数年の経験から看護に関連した3つの領域を紹介しよう。
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