連載 カウンセリングの現場から・12(最終回)
蘇る記憶
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.1014-1015
発行日 2000年12月10日
Published Date 2000/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901128
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1995年1月17日早朝,神戸を中心とした阪神地方を激震が襲った。のちに「阪神淡路大震災」と命名されたこの大地震は,今日に至るまで,多くのマスコミの媒体を通じてさまざまに論じられてきた。すべてが論じ尽くされたかのように見えるが,さらに5年,10年と時を経ないと語られないこともあるだろう。私も含め,多くの人々はテレビの画面を通して生々しい映像によってその被害を目の当たりにした。あの美しい神戸の町が一瞬のうちに崩壊し,多くの命が奪われた映像が茶の間の人々にどんな影響を与えたのだろうか。
これまでシリーズで述べてきた人たちはほとんどが女性だった。しかし,少数ではあるが男性もクライエントとして我々のセンターに訪れる。主訴はさまざまだが,その多くがACだと自覚して,親との関係を整理しようとする人たちである。女性でも,カウンセリングというと,いまだに精神科受診と混同して,病気の治療ではないかと偏見をもっている人も多いなかで,男性が自分から求めて来所するということは,かなりの勇気とそれだけ明確な動機があってのことなのだ。そのほとんどが中年期の男性であり,社会的には何ら問題はなく,多くが結婚をして家族を形成している。
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