連載 とらうべ
蘇る月
志賀 勝
pp.933
発行日 2001年11月25日
Published Date 2001/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902753
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中国の古代思想に「物極まれば反す」という格言があり,古代アラビアの詩人は「物事の真相は反対のものによってあばかれる」と謳った。今日の状況こそまさに,深い傷に悩まされつつひとつの時代の終焉を目撃している時,そしてたとえば,日本の伝統的な生活様式を見直そうといった,これまでと正反対の価値観に日が向けられる時である。新しいものの誕生,産声が切に望まれている時なのである。
今終わろうとしている時代の根本的問題に,時間のセットの間違いがあった。出産が土・日よりも平日に偏っているというのも,陣痛促進剤の使用も,セットされた人為的時間に囚われた時代の産物。私たちは自分のものではない時間に,ちょうどエンデの『モモ』の世界のように,追い立てられて生きてきた。その時間の組織化,表現である現行のカレンダーの不自然さに,今や多くの人びとが気づきはじめている。
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