連載 ニューヨーク人間模様・1【新連載】
バイバイ,優等生
大竹 秀子
pp.76-77
発行日 2000年1月10日
Published Date 2000/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901087
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「近ごろの学生って」,海の向こうからの深夜電話で,姉がぼやいている。「何かを追究してみようっていう気構えがないんだから。頑張るってことをしない。だから,面白さがわかるところまでもいかないのよ」。日本の大学で教えているこの姉は,だが,「優等生」も嫌いだ。与えられた課題はそつなくこなすけれどもヒラメキがない,センスに欠ける,そんな学生は地獄にでも落ちろと思っているに違いない。
のめりこむタイプの姉には,熱中できるものがいつもある。うらやましいばかりの天才肌だが,その分,ひどくヌケてもいる。財布を落としてはしょっちゅう警察のご厄介になるし,いつだったかは,腕時計の行方を家じゅう血眼になって探したあげく,自分の腕にはまっているのを発見した。「ないないと思ったら,はめてたのよね」。いい加減にしろ,だ。
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