連載 ニューヨーク人間模様・9
ところ変われば……
大竹 秀子
pp.776-777
発行日 2000年9月10日
Published Date 2000/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901285
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近頃の日本は,謎である。「ねえねえ」,久しぶりの里帰りから戻って来たばかりの友達が言う。「私,東京に行ってすごーくびつくりしたのがね,背広着て,ちっともオシャレでもなんでもないフツーのおじさんが,頭だけチャパツなの」。「えーつ! 何考えてんだろ。チャパツして,会社に行くのー? たまたま変わったオジサンに出くわしただけじゃないのー?」「違う,違う。1人だけじゃなかったもん」。お互い,口うるさい親に育てられた世代である。ジーンズをはけば野良着だとイヤな顔されたし,タバコはこっそり隠れて吸った。親が子どもと一緒に「流行」をやるなんて,しめしがつかないよね,と私たちはボヤいた。旧いのかしらん。
ニューヨークでだって,人は髪を染める。だけど,オレンジ色の髪して通勤するおじさん会社員には会ったことがない。突飛な格好をする若いコはどっさりいても,堅気の大人の世界は,退屈なまでに保守的。いつまでも時流にワイワイ乗っていては,世の信頼を得られない。「放送局」というあだ名を持つその友達は,話をより面白く大きくするので知られているから,「蔓延するチャパツおじさん」の話も,半分マユツバで聞いてはいた。
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