連載 カウンセリングの現場から・1【新連載】
母の「不幸」
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.74-75
発行日 2000年1月10日
Published Date 2000/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901086
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「どうしてあんないい子が。ほんとにいい子だったんですよ。親の私が言うのもなんですが,成績もよくって,なんの強制もしなかったのに勉強もすすんでする子でした。やさしくて親思いで……。あの子がおかしくなりはじめたのは中学校のいじめが原因だと思います。担任の教師がまったく無責任で,かなり前からそのことを知っていながら何の対策も講じなかったんです。あの頃から暗い子になってしまいました。そのことをあの子は私を心配させないようにと黙っていたんですね。私は何にも知らずにいました。もっと注意深く観察していればよかった。やっぱり私が悪いんですよね」
A子さんは憑かれたように一気にしゃべってしまうと,少し落ちついたようで深呼吸をした。40代後半,痩せぎすな体つきで白髪がところどころ目立つ。長男が一流高校に通っていたのだが2年生の半ばから不登校になり,その後22歳の今日まで自宅に引きこもっている。
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