連載 かれんと
助け合いとマーケット
竹内 章郎
1
1岐阜大学地域科学部
pp.239
発行日 1997年4月10日
Published Date 1997/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900626
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「助け合い」は,マスコミの論調や社会の趨勢であるだけでなく,身近なところでも近年の話題の1つだろう.阪神大震災や重油流出事故の復旧に役だちたい,といった人々の善意によるボランティア活動がその最たるものだが,多くの自治体が職員に有給のボランティア休暇を認めようとしている.また,利益を目的としない市民活動(NPO)の法的保護も,広くは市民相互の助け合い活動の円滑化を意図するものだが,「助け合い」はそれらだけではない.
社会保障の問題であると同時に,社会的入院や公的医療費削減など,医療とも密接な関係のある公的介護保険論の中には,賛否は別にして,高齢者介護を,これまで以上に世代間の助け合いの問題として捉える傾向がある.困っている人々を,比較的余裕のある人々や世代が自発的に助けるというのであれば,それ自体はとてもよいことだ.ここで考えたいのは,助け合い活動には──ボランティアが点数化されて入試や就職を左右する場合等を除けば──普通の労働や営業活動の目的となっている利益や所得などが何も伴わないという点である.助け合い活動は,労働や資本や消費を巡る市場(マーケツト)での活動ではないからだ.
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