連載 職場の労務管理―管理者に必要な視点・3
看護管理者が知っておくべき労働法制の知識
宮﨑 和子
1
1東洋大学大学院博士課程
pp.779-785
発行日 1997年10月10日
Published Date 1997/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900567
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はじめに
14歳(当時は数え年なので現在の12,3歳)の細谷少年が経験したような「地獄の労働」は,「影のように現実の世界から遠のいて行った」1)という,工場法施行(1916年)の効果について畠中氏が連載第1回(本誌8月号)で引用された細谷松太氏の随想の最後の場面には,強烈な印象を受けた.日本ではじめて示された労働基準のようなものが工場法であることは,氏の論説で詳細に語られている.
第2次大戦後,日本国憲法が生まれ,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(憲法前文)という人類普遍の原理を国民が享受できるようになった.そしてわが国のあらゆる法はこの憲法の精神の具体化として立法されたのである.この連載に関係するものでは,第11条「基本的人権の享有と本質」,第13条「個人の尊重,生命・自由・幸福追求の権利の尊重」,第25条「生存権,国の生存権保障義務」,第27条「勤労の権利・義務,勤労条件の基準,児童酷使の禁止」などがある.これらの条文は最も重要な基本的な問題を示している.細谷少年の例は,これら人間にとってごく当たり前のことが憲法によって保障されなければ,ついこの間まで人間の尊厳を守ることができなかったことを思い起こさせる.
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