連載講座 公害・2
法制問題
金村 博晴
1
1厚生省環境衛生局公害課
pp.290-293
発行日 1965年5月15日
Published Date 1965/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203053
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■公害関係法令の現状
「公害」という言葉であらわされる範囲は,現在人によって種々雑多になっているが,事故または過失によって生ずる被害を公害の範疇から除外して考えれば,公害そのものを防止するための法律は,数えるほどしかない。それというのも,公害に対する認識が高まってきて法的規制の必要性が一般的に承認されるようになったのが近年のことであり,以前にはむしろ,公害の発生は必要悪である,場合によっては悪とさえも感じられていなかったことが一つの原因であろう。また他面,ばい煙,騒音,振動,悪臭,廃液などの公害原因を除去する方法が発達しなければ,法律でいかに規制しようとしても,工場,事業場などの活動をやめなければ,実行できないようであれば実効性のない法律となってしまうということも一つの原因であろう。もちろん,人の健康をそこなうようなものであれば,工場,事業場の事業活動を中止させても規制しなければならないものである。しかし,短期間にその影響があらわれるものは別として,長期間たってはじめて影響があらわれるようなものは,その因果関係の証明がむずかしいばかりか,許容限度をいかに定めるかが極めて困難な問題に属する。従って,法的規制の程度もまたきめにくいことになるということも一つの原因であろう。現在,自動車排ガス,悪臭,振動に関し,規制する法令がないといっても過言ではないのは,これらの原因のいくつかが存するためでもあろ。
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