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本稿において,私は,現在の日本におけるリハビリテーションの法制構造を教科書的に解説する積りは全くない.何故ならば,そのような大学における教科書のような説明はすでにいろいろな書物に書かれており,それを本稿のような限られた紙面を使って屋上屋を架すがごとく書くことは紙面の無駄づかいと考えるからである.それよりも,私は,日本におけるリハビリテーションに関する法制に対し,障害者がどのようなことを期待しているかについて述べてみることにしたいと思う.そうすることが,現在の日本におけるリハビリテーションの法制構造の問題点をクローズアップさせることとなり,かつ,これからリハビリテーションにかかわる人々にひとつの視点を与えることになろうと考えるからである.
障害者が,いわゆるリハビリテーションのいろいろなプロセスに取り組む最終の目標は,一般社会の中でいかに自立できるかということである.しかも,この障害者のめざす社会での自立とは,一般社会の人々と同じように社会の本流の中で,一般の人々とゴチャゴチャになって生きていくということである.障害者だけを1か所に集め,その限定されたテリトリーの中だけでの自立では決してない.また,いわゆる福祉の専門家といわれる人々によって取り囲こまれた中での自立では決してない.障害者は,これまでどちらかというと,社会の片隅で,社会から生かさず殺さずといった感じであつかわれながら生きてきたように思われるし,しかも,それがごくあたりまえといった雰囲気が,一般社会の人々の中にも,障害者自身の中にもあったように思われる.そして,このような雰囲気,いいかえれば,このような社会的背景の中で現在のリハビリテーション法制はかたちづくられてきたのである.
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