特集 看護部がつくる病棟の環境
採光の看護管理
加納 佳代子
1
1全国社会保険協会連合会病院部看護課
pp.258-263
発行日 1996年4月10日
Published Date 1996/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900478
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
初めて私が療養環境の中の採光に関心を向けたのは今から25年前,大学病院での実習中であった.当時の大学病院は古い煉瓦造りの建物で,天井が高く窓も高かった.暗い廊下から病室に入ると,窓からは木漏れ日がさしていた.窓の外のニセアカシヤの木々の葉が揺れ,ガラス窓を通して,白いシーツにチラチラとその影が映り美しかった.実習終了近くに西日がさっとさして,病室の色が変化するのもまた美しかったが,その美しさがつくられていたのは実は,カーテンがこわれていたからである.
「看護上の問題点」と「具体策」を書くという初めての実習記録に,私は「西日が顔にあたってまぶしいが,患者は自分でカーテンを引けない」「こわれたカーテンをなおす.まぶしい時間にはカーテンを看護婦が調節する」と書いた.ごく当たり前のことを書いただけなのに,担当教師にほめられ不思議に思った.「そうよ,それが看護なのよ」とほめてくれた教師の気持ちが理解できたのは,臨床で診療介助に追いまくられている中で,看護婦のすべき仕事を本気で考えてからであった.実習当時,私はまだ読んでいなかったが,ナイチンゲールの『看護覚え書』には,「新鮮な空気の次に,病人が求める2番目のものは陽光をおいてほかにない」と書いてあった.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.