特集 看護部がつくる病棟の環境
ICUにおける音環境の改善―病棟のサウンドスケープ
服部 俊子
1
,
上原 和夫
2
1淀川キリスト教病院看護部
2大阪芸術大学音楽学科
pp.264-270
発行日 1996年4月10日
Published Date 1996/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900479
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サウンドスケープの移り変わり
産業革命を迎える以前の文明社会において,音は日常の生活音や人々を取り巻く自然の中の風の音,雨の音そして動物たちの鳴き声などによって構成され,調和のとれた音環境を形成していた.ヨーロッパでは教会の鐘の音が,日本では寺の梵鐘が人々の暮らしの音風景(サウンドスケープ)の中でシンボリックな音として存在し,時を知らせる役割を担いつつ生活のリズムを刻んでいた.
ところが産業革命以降,われわれの生活圏にさまざまな機械音が侵入しはじめ,音環境に決定的な変化をもたらした.20世紀に入ると,街には音圧レベルの高い車の音などが溢れ,かつて支配的であった自然音は騒音のなかに埋没し,街のシンボルとしての鐘の音の到達範囲が挟まってしまった.
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