特集 看護管理と労働組合
識者から
看護集団の意志を尊重する
中山 和久
1
1早稲田大学・法学部
pp.303-306
発行日 1993年9月15日
Published Date 1993/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900188
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公共の役務と専門職性
看護婦という仕事は教員の場合と同様に,専門職である〔ILO看護職員勧告5(2)a〕.そして専門職であるということは,「きびしい不断の研究を通じて獲得され,かつ維持される専門的知識および特別の技能を要求する公共の役務の一形態である」(ユネスコ・ILO教員の地位勧告7項)ことを意味する.
「公共の役務」ということは,看護がその一部をなす医療という仕事が営利目的の仕事ではなく,公共の役に立つことにその本質があることを示している.もちろんそうはいっても,医療の仕事が常に採算のあわない仕事でなければならない,ということを意味しない.一般の企業のように,利潤の追求が第一目的であることのない特別の仕事である,ということを意味する.そこから医療における労使関係の特殊性が生まれる.使用者は一般の企業の場合とは異なり,利潤の追求をもっぱら目的とするものではないし,労働者の側も利益を求めてもっぱら有利な労働条件を追求するものでもない.労も使も「公共の役務」への貢献が中心目的であるような業務に従事しているという点では共通している.だから,労使の間に一方は利潤のあくなき追求をめざし,他方は労働者の利益・地位の確保をめざし,両者の間に共通な関心はパイ(分配前の利潤)をより大きくすることのみである,という一般企業の場合とは違い,「公共の役務」を実行し改善するという目的において,基本的な対立はないと言える.
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