連載 スタッフの倫理的感受性を高める ナースマネジャーがともに考える臨床倫理――臨床看護師が直面する倫理的ジレンマを紐解く・2
自律の尊重
竹之内 沙弥香
1
,
田村 恵子
2
,
浅井 篤
3
1京都大学大学院医学研究科医学専攻社会健康医学系医療倫理学分野
2淀川キリスト教病院ホスピス看護課
3熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.154-159
発行日 2010年2月10日
Published Date 2010/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101681
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自律の尊重とは
臨床現場では,意思決定に関わることを拒む患者や,意思決定能力を欠いている患者など,自分のことを自分で決められない患者がいる。その一方で,標準的で妥当であると思えないような医療を要求する患者もいる。患者の治療方針の決定をサポートするにあたり,看護師はそのような患者の自律をどのように尊重すればよいのかと戸惑うことがあるだろう。
自律の尊重の原則は,自ら選択した計画に沿って自分自身の行動を決定する個人的な自由を保障するものである1)。しかし複数の医療者による検討の結果,患者の選択を尊重することが患者にとって最善とは言えないという結論に至る場合には,自律の尊重の原則を適応することは難しくなる。看護倫理学者であるFryらは著書の中で,患者の自律は内的,外的要因によって影響されるものであるため,看護師は患者の自律に限界があることを認識し,正当なパターナリズムを優先することを考慮する必要があると述べている1)。
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