連載 実証研究・7
千葉県下3病院にみる中小民間・「基準看護」非採用病院における看護労働
「看護婦」の意識と主体性
林 千冬
1
1東京大学大学院医学系研究科博士課程・保健社会学教室
pp.268-273
発行日 1993年7月15日
Published Date 1993/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900181
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「理念と現実のギャップ」の中で
中小民間・「基準看護」非採用病院における看護労働の特性は,看護職者総体の中でもとりわけ劣悪な労働条件と,業務内容における"看護"の不在という大きく2点に集約することができる.しかし,そうした状態にある「看護婦」たちに,聴き取り調査の中で「看護の専門性とは何だと思うか」あるいは「看護婦の専門職性とは何だと思うか」と尋ねた時,ほとんどの者がまず第1にあげたのは〈ベッド・サイド・ケア〉〈日常生活援助〉に関連することがらであった.
「看護婦」という職業について,「その専門的役割の中心は,患者の日常生活援助にある」という価値観を持つことは,むろん彼女たちにのみ特別なことではない.この〈理念的〉とも言える価値観は,(いかなる教育課程においても)看護基礎教育の中で教えられている内容とも通じ,「看護婦」総体の中に広く共通して形成されているものであろう.
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