特集 ナースの生活—看護婦宿舎と勤務体制
看護婦宿舎とナースの主体性
渡辺 華子
pp.14-19
発行日 1964年11月1日
Published Date 1964/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912427
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看護婦の主体性と看護婦の宿舎の問題ということであるが,わたくしはこの問題の研究を分担するものの一人として,少し距離を置いたところから入ってみたいと思うので,まず,看護婦と宿舎の関係を,農業における労働者と農地の関係と比べることから始めてみようと思う。
看護プロパーと宿舎の切り離しを
農業労働は,どこの人間の集団にも,古くからあったが,農業をするには,作物を裁培し,農産物を収獲するための農地がなければ,生産できない。農業には土地が附き物であるために,土地のあるなし,良否と農業をする人間との関係が,土地の所有権,耕作権の問題や,地主と小作人の関係や,農地面積と経営規模の問題をひきおこすことになった。そして農地がやがて農業のありかたを決める主体となり,農業生産に携わる人々は農地と離れることもできず,これに生涯を支配されて生きるものとなった。農民の労働条件は慣習的に,農地に従属して決まるようになった—ともいえる。
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