カレンダー解説
少女—モジリアニ
pp.35
発行日 1966年4月10日
Published Date 1966/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203623
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桃色の服を着たあどけない少女の像で,この作品ではひじょうにデリケートな線がよく働いて,少女のういういしい感じを純潔にあらわしている.しかし,そこにはなにかしら孤独な悲しさがただよい,いつもうす暗い人生の影がつきまとっているようである.モジリアニの短い生涯は,激しい情熱にもえたっていたが,その炎にはいつも冷たい影がつきまとっていたことが,このような作品の奥からうかがわれる.
イタリアで生まれたモジリアニが,美術のるつぼであるパリの土を踏んだのは22歳の時である.パリには,そのころあらゆる民族の新しい意欲が集結しており,ここで彼は,若い熱烈な個性の間に交わって,画家としての好運な発足をみる.そしてセザンヌからの影響を起点として,モジリアニ独自の人間像を追求していく.その独特の個性的告白は,暗い哀感と,しいたげられた人間の中からわいてくる執念深さをあらわし,酸味をおびてほろにがいが,痛烈な生活感情に満ちている.このような人間への愛着と孤独感をもとにして,そのねばっこい追求は,人間と人体と生活とに向けられていった.彼は「風景画などありえない」といったほどである.
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