連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・200
鉛筆画で心を描くスージー・リーの世界
柳田 邦男
pp.548-549
発行日 2023年6月10日
Published Date 2023/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686202418
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国際アンデルセン賞画家賞を受賞した韓国のイラストレーター・スージー・リーの言葉のない絵本2点,『なみ』と『せん』を,パラパラとめくって見た瞬間,私の脳裏をよぎったのは,亡きベルギーの絵本作家ガブリエル・バンサンの『アンジュール』や『ヴァイオリニスト』だった。
『アンジュール』では,捨てられた犬の孤独感と疎外感を,鉛筆によるモノクロの線だけで,みごとに描き切っている。『ヴァイオリニスト』では,父親の威圧の下で,自由でのびやかにヴァイオリンを弾くことのできない若者の苦悩を,心憎いまでに表現し切っている。そういうバンサンの天才的な筆遣いを連想するほどの魅力を,スージー・リーの絵から感じたのだ。
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