- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
連載のはじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを通して,従来の医療現場,医療と看護のあり方を見直す機会が増えました。コロナ禍のひっ迫した状況の中で,適切な臨床看護教育を行うことが難しくなり,COVID-19感染患者の看護に必要な知識と技術は,オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)で危機を乗り越えたという経験をされた方も多いのではないでしょうか? 同時に,臨床看護師へのサポートが十分にされているか,働く環境が整っているか,などのさまざまな疑問を持ちながら日々の看護に当たっていることと思います。
米国の看護現場でも同じ悩みがありました。私はCOVID-19のパンデミックを,米国で最も感染者が多かったニューヨーク市内の総合病院のCOVID-19感染患者専用集中治療室(COVID-ICU)で経験しました。2020年3月1日,初めてのCOVID-19感染者がニューヨーク市内で確認された後,感染率はあっという間に上昇し,3月16日に市内の学校が閉鎖され,20日に非常事態宣言が出されました。非常事態宣言から41日後の4月30日には,死者の数がニューヨーク市内だけでも1万2571人に上りました1)。
このような状況は誰も予想していませんでしたし,準備ができていなかったので医療機関は大きな打撃を受けました。特に重篤なCOVID-19感染者を看護するICU看護師が不足し,その不足対策として,クリティカルケアの訓練を受けていない看護師とICU看護師がチームとなってCOVID-ICUで重篤患者を看護するチームナーシングが取り入れられました。同時に,一般病棟でも急速に重篤化する患者を看護するため,看護師たちの高度な知識と技術が要求される状況になり,私たち看護師はさまざまな不安と闘いながらこの最も大変な時期を乗り越えました。
この経験を通して,誰もが今後の臨床看護教育の強化や教育のあり方について深く考えさせられる機会を与えられたのも事実です。こうした苦労の反面,オンラインでの看護教育や情報交換が進み,私たちの学びの場が効率よく広がることになりました。コンピューターまたはスマートフォンがあれば,海を越えてお互いに知識を分かち合い,学び合う環境が生まれました。
このような環境にあって,看護師同士の横のつながりを増やし学び合う機会となるように,本連載では,米国で私が臨床看護師として経験した臨床教育や病院内での看護師支援について具体例を交えてご紹介しながら今後のあり方について一緒に考えていきたいと思います。
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.