Derm.2021
コロナ禍にて
有馬 豪
1
1藤田医科大学医学部皮膚科学
pp.55
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206332
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「ウォー」現在の私の叫びである.藤田医科大学は2020年2月にクルーズ船「ダイアモンドプリンセス号」のCOVID-19に罹患した乗客を受け入れた藤田医科大学岡崎医療センターを分院に持つ本院である.昨年10月末,ICUに入院中のコロナ患者の皮疹について診察依頼があった.ICUではゾーニングがしっかりされており,ガウン,マスク,手袋,検体の取り扱いなどしっかりとマニュアル化されていた.個人的にはコロナは風邪だとしか思っていないが,感染者の診察依頼には緊張感が走った.やっぱり怖いよー.これが,一緒に診察に当たった後輩医師との共通認識であった.現場で診療に当たっている医療従事者の感覚としては感染者をゼロにするという理想論はもともと破綻しており,死者を減らす方向に転換すべきである.ところが,理想論にしがみつき,感染者を減らすために医療崩壊の危機を喧伝し,国民を恐れさせなければいけないとでも思っているのではないか.少数の厳しい現場で苦労している医療従事者が,外に向かって大きな声で言えないのが現状である.本当に必要なことに目を向けてほしいが,現に見えるのは,ウイルスより醜い人間のエゴイズムである.今回のコロナ禍は地球によるエゴのかたまりである人類に対する戒めではないだろうか.最後に無力な私は「ウォー」と叫んでいるだけだった.
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